診療・各部門
最上位機種の内視鏡機器を用いて経験豊富な消化器内視鏡専門医が検査
従来、消化管(食道、胃、大腸)のがんに対しては、病変局所と周囲のリンパ節を同時に切除する外科的な治療(ある程度の長さお腹や胸を切る手術や数箇所お腹や胸に穴を開けて内視鏡を用いる鏡視下手術)が行われていました。
現在でも、リンパ節転移の可能性があるがんに対しては外科的な治 療が必要ですが、早期がんの中でも一定の基準を満たすより初期のがんは、リンパ節に転移している可能性が極めて低いことが解かってきました。このような基 準を満たす早期がんは、周囲リンパ節を切除しなくても病変局所の切除のみで完治が望めるため、お腹や胸を切らずに口や肛門から挿入した内視鏡を使って切除 することができます。お腹や胸に傷ができないので術後の痛みがなく早期(術後5-6日目)の退院が可能です。
内視鏡を用いた治療方法にはEMR(内視鏡的粘膜切除術)とESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)とういう2つがあります。最初に開発されたEMRは、スネアと呼ばれる金属の輪っかを病変に引っ掛け高周波電流を流して切り取る方法です(図1)。難易度はそれほど高くありませんが、スネアが狙った部位に正確に引っ掛からないことがしばしばあること、スネアが引っ掛かる大きさの組織しか切り取れないことが欠点でした。ESDは様々な種類の電気メスを使って消化管の表面を切り剥がしてゆく方法で(図2)、 理論的には狙った部位を正確にしかも大きさに制限なく切除できます。ESDで使用する各種処置具の盛んな開発、改良に伴って近年、広く普及してきています が、技術的に難易度が高いため、EMRに比べ治療に長時間を要し、出血や穿孔(消化管に穴があくこと)といった偶発症の発生頻度が高くなる傾向にあること が問題視されています。特に、胃に比較すると食道や大腸において穿孔の発生頻度が高いとされています。
ESDは1990年代半ばに東京の国立がん研究センターで胃病変 に対して開始されました。当院では、筑豊・北九州地区の病院の中では比較的早い時期の2004年に胃病変にESDを導入し、徐々に難易度の高い食道病変や 大腸病変に対しても導入していきました。2010年7月までに335病変(胃 254病変、大腸63病変、食道 18病変)に対してESDを行っており、最近ではほとんど偶発症を生じることなく安全に施行できています。1例を提示します。検診の胃透視で異常を指摘さ れた無症状の63歳、男性です。胃の中部に約10×5cmと約4×2cmの2個の早期胃がんを認めました(図3)。ESD法を用いてこれら2個のがんを13cm×8.5cmの同一標本内に完全切除しました(図4)。このように広範囲であってもお腹を切らずに内視鏡で切除できる時代となりました。
しかし、前述したように内視鏡を使った治療で完治が望めるがんは 早期がんの中でも一定基準を満たすより初期のがんですので、極めて早い段階で病変を発見することが重要です。そのため、症状がなくても内視鏡検査(いわゆ る胃カメラや大腸カメラ)を定期的に(1-2年に1回程度)受けることをお勧めいたします。
当院では原則としてハイビジョン画質で観察ができ、特殊光観察機能を搭載した最上位機種の内視鏡機器を用いて経験豊富な消化器内視鏡専門医が検査を行っていますのでご利用いただけると幸いです。
医師紹介
消化器科診療医師 | |
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村田 征喜 | 日本内科学会 認定内科医 |
大野 眞由美 (非常勤) |
臨床研究協力についてのお知らせ
現在、日本消化器内視鏡学会では「消化器内視鏡に関連する疾患、治療手技データベース構築(多施設共同前向き観察研究)」という臨床研究を実施しています。
当院では、この研究に協力をしています。詳細につきましてはこちらをご覧ください。